01この記事でできるようになること
この記事を読むと、主要な案件が終了・縮小したときに、何から手をつければよいかが分かります。現状の正確な把握から、支出の見直し、新規開拓の再起動、再発防止の仕組みづくりまでを、順を追って扱います。
先に断っておきます。この記事の手順を踏んでも、収入がすぐに回復するとは限りません。新規の案件獲得には一定の時間がかかることが多く、この記事は、その期間を耐えながら次に動くための手順を示すものです。
案件が切れること自体は、独立を続けていれば誰にでも起こり得る出来事です。特別な失敗として自分を責めるより、想定していた事態への対応として淡々と手順を進めるほうが、立て直しは早く進みます。この記事は、動揺した状態でも順を追って進められるよう、手順を細かく分けて示しています。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、主要な取引先との契約が終了、または大幅に縮小し、収入の見通しが立たなくなった独立Webマーケターです。案件が切れるリスクへの備え方そのものは『独立Webマーケターの単価改定とチーム化、事業を伸ばす道筋』でも触れています。
準備するものは2つです。1つ目は、直近数か月分の収支の実績です。2つ目は、現在動いている案件と、過去に取引のあったクライアントの一覧です。過去の取引先は、新規開拓よりも先に当たるべき相手になることが多いため、まず洗い出してください。
03手順1|現状を正確に把握する
慌てて動き出す前に、現状を数字で把握してください。確認すべきは、今後3か月の収入見込み、手元の生活防衛費で耐えられる期間、そして現在も継続している案件の有無です。感覚で「まずい」と焦るより、数字で状況を確認するほうが、次の判断がぶれにくくなります。
継続している案件がまだある場合は、その案件の稼働に支障が出ないよう配慮しつつ、新規開拓の時間を確保する計画を立ててください。継続案件がゼロの場合は、新規開拓を最優先に切り替える判断が必要です。
生活防衛費で耐えられる期間が短い場合、次の手順で支出を見直すことが特に重要になります。期間に余裕がある場合でも、支出の見直し自体は行っておく価値があります。
現状把握は、1回だけで終わらせるものではありません。新規開拓を進めながら、週に1回など決まった頻度で数字を見直すと、状況の変化に早く気づけます。収入見込みが改善しているのか、耐えられる期間が縮んでいるのかを定点観測する習慣が、次の判断の精度を上げます。
04手順2|支出を見直す
収入が不確実な期間は、固定費を中心に支出を見直してください。ツールの契約プラン、サブスクリプション、使っていないサービスなど、見直せる項目は独立を続けるうちに積み重なっていることがあります。
外注メンバーがいる場合は、発注量を一時的に調整するかどうかを検討してください。ただし、発注を急に止めると、外注先との信頼関係に影響することがあります。状況を正直に伝え、再開の見込みとあわせて相談する進め方をおすすめします。
発注量を調整する際は、全面的な打ち切りと部分的な縮小のどちらが適切かを、案件の見通しに応じて判断してください。新規開拓の目処が立ちつつある段階であれば、稼働量を減らしつつ関係を維持するほうが、立て直し後にすぐ体制を戻せます。目処がまったく立たない段階では、正直にその旨を伝えたうえで、いったん契約を区切る判断も選択肢に入ります。
生活防衛費の考え方や、独立初年度の資金設計そのものは『独立初年度のWebマーケター、資金計画と生活防衛費の設計』で扱っています。続ける段階でも、この記事で示した3つの財布の考え方は変わらず使えます。
支出を見直す際は、削って良いものと削ってはいけないものを分けて考えてください。営業活動に必要なツールや、提案の質を保つための投資まで削ってしまうと、立て直しそのものが遅れる原因になります。生活費に近い支出を優先して見直し、事業に直結する支出は最後まで残す考え方が安全です。
05手順3|新規開拓のチャネルを再起動する
編集部が卒業生インタビュー記事35本を確認したところ、案件獲得の経路に触れていたのは27本でした(出典: 卒業生インタビュー記事35本の確認、全128本のうち)。この調査は2026年8月時点で実施したものです。経路として多く見られたのは、クラウドソーシングへの応募、知人や講師・運営からの紹介、テレアポ、現職内での直談判でした。
この結果が示しているのは、経路が1つに偏っていない人が多いという傾向です。案件が切れた直後は、慣れた経路だけに頼るのではなく、複数の経路を同時に動かすほうが、立て直しの速度は上がりやすくなります。クラウドソーシングへの応募は、すぐに動ける経路として優先度が高くなります。
過去の取引先や、スクール時代のつながりへ連絡することも、有効な経路の1つです。すでに関係ができている相手のほうが、新規の相手より話が進みやすい傾向があります。連絡すること自体をためらう必要はありません。
複数の経路を同時に動かすときは、優先順位をつけておくと動きやすくなります。話が進みやすい過去の接点への連絡を先に済ませ、返答を待つ間にクラウドソーシングへの応募を進める、といった並行の組み方が現実的です。1つの経路の返答を待ってから次の経路に着手すると、立て直しに要する時間が延びてしまいます。
06手順4|既存の細い接点を太くする
新規開拓と並行して、過去に取引のあった相手や、名刺交換だけで終わっている相手にも連絡してみてください。すぐに案件につながらなくても、状況を伝えておくこと自体に意味があります。
過去のクライアントへの再連絡文例(架空の例)
以下は架空の例です。実在の企業名・個人名ではありません。しばらく連絡が途絶えていた過去のクライアントへ、近況を伝えつつ、案件があれば相談したい旨を伝える例です。
件名:ご無沙汰しております ○○様 いつもお世話になっております。△△です。 ご無沙汰しておりますが、いかがお過ごしでしょうか。 以前ご一緒させていただいた□□の件では、大変お世話になりました。 現在、新しいご相談も承れる状況にございます。 もし何か□□関連でお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
このサンプルは、近況の挨拶、過去の取引への感謝、現在の状況の共有、相談を歓迎する姿勢という4つの要素で構成されています。案件を直接求める書き方ではなく、相談を歓迎する形にとどめている点がポイントです。
送る前に、次の要素が入っているかを確認してください。
- 過去の取引への感謝が含まれているか
- 現在、新しい相談を受けられる状況であることが伝わるか
- 案件を直接求める書き方ではなく、相談を歓迎する形になっているか
- 返信を急かす表現になっていないか
07手順5|再発防止のために取引先を複線化する
立て直しが一段落したら、同じ状況を繰り返さないための備えを考えてください。中心になる考え方は、取引先を1社に依存させないことです。WEBMARKSの案件獲得データでは、案件獲得者の70%以上が2案件以上を獲得しています(出典: WEBMARKS案件獲得データ集計、2020年〜2025年)。
日本では2024年11月に、業務委託で仕事を受ける個人を保護する法律が施行されました。中小企業庁のフリーランス新法の解説ページでは、一定期間以上続く業務委託の契約終了について事前の予告が求められる場合があります。自分の契約が対象になるかどうかは、中小企業庁の公式情報で確認してください。契約終了の予告があれば、その期間を新規開拓の準備に充てられます。
生活防衛費そのものに加えて、将来の備えとして中小機構の小規模企業共済のような制度を検討する考え方もあります。事業の状況に応じて、資金面での備えを厚くしておくと、次に案件が切れる場面が来ても、落ち着いて対応しやすくなります。
再発防止の仕組みは、一度作ったら終わりではありません。取引先の数や比率は案件の状況によって変化するため、定期的に見直す習慣をつけておくと、次に同じような状況が来たときの影響を小さくできます。立て直しの経験そのものを、今後の判断材料として残しておく価値があります。
08つまずきポイント(失敗例つき)
案件が切れたときの立て直しで、よくあるつまずきを整理します。
1つ目は、現状把握をせず、感覚だけで焦って動いてしまう型です。数字を確認しないまま闇雲に営業を始めると、優先順位を誤りやすくなります。
2つ目は、1つの経路だけに頼ってしまう型です。過去にうまくいった経路に固執すると、その経路がうまくいかなかったときに次の手がなくなります。
3つ目は、過去の取引先への連絡を「今さら」と感じて避けてしまう型です。実際には、関係ができている相手のほうが話が進みやすい場合が多く、連絡を避けること自体が機会損失になります。
4つ目は、立て直しが済んだ後、取引先の複線化という再発防止策を先送りしてしまう型です。収入が戻ると安心してしまい、同じ状況を繰り返すケースが起こりやすくなります。
5つ目は、支出の見直しで、事業に必要な投資まで削ってしまう型です。目先の支出を減らすことを優先しすぎると、新規開拓に使う時間やツールが不足し、立て直し自体が長引く結果につながります。
09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
立て直しの手順が完了したかどうかは、次の3点で確認できます。1つ目は、現状の数字(収入見込み・耐えられる期間・継続案件の有無)を把握できていることです。2つ目は、新規開拓の複数の経路を同時に動かせていることです。3つ目は、取引先を複線化する再発防止の方針を決められていることです。
3つとも整っていれば、立て直しの動き方としての最低限は整った状態です。実際に収入が戻るまでには時間がかかることもあるため、焦らず複数の経路を継続して動かしてください。
立て直しの過程で得た気づきは、記録しておくことをおすすめします。どの経路が反応につながりやすかったか、どのクライアントとの関係が実は太かったかは、次に同じ状況が来たときの判断材料になります。1度きりの経験で終わらせず、自分なりの立て直しの型として残しておくと、2度目以降はより短い時間で対応できるようになります。
10FAQ
案件が切れてから、どれくらいで立て直せますか
一律の期間は言えません。新規開拓には一定の時間がかかることが多く、経路や本人の状況によって差があります。焦らず複数の経路を並行して動かすことが、結果的に早い立て直しにつながりやすくなります。
過去のクライアントへ連絡するのは失礼にあたりませんか
一般的には失礼にはあたりません。相談を歓迎する姿勢で連絡すれば、多くの場合、好意的に受け止められます。案件を直接求める書き方を避け、近況の共有にとどめる書き方をおすすめします。
外注メンバーがいる場合、すぐに契約を打ち切るべきですか
すぐに打ち切る必要はありません。状況を正直に伝え、発注量の調整について相談する進め方のほうが、後々の関係を保ちやすくなります。急な契約打ち切りは、信頼関係に影響することがあります。
立て直しの間、単価を下げてでも案件を取るべきですか
一律に下げるべきとは言えません。単価を下げると、立て直し後も同じ単価で依頼されるリスクがあります。まずは複数の経路で提案数を増やすことを優先し、単価は現在の水準を維持する方向で検討してください。
案件が切れるリスクを事前に減らす方法はありますか
あります。取引先を複線化しておくことが、最も基本的な予防策です。単価改定やチーム化の判断とあわせて、取引先の分散を意識する考え方は『独立Webマーケターの単価改定とチーム化、事業を伸ばす道筋』で扱っています。