01この記事でできるようになること
自分の実務スキルを、クライアントや面接官に伝わる言葉で説明できるようになります。専門用語をそのまま使うのではなく、相手にとっての価値に置き換える考え方を身につけます。
この記事は、スキルの習得手順そのものではなく、身につけたスキルをどう言葉にして伝えるかという、コミュニケーションの手順を扱います。SEOや広告運用の実務レベルの目安は『SEOスキル、実務でどこまでできれば案件が取れるか』『広告運用スキル、実務でどこまでできれば案件が取れるか』で扱っています。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、直取引・エージェント経由の案件で提案書や商談を通じてクライアントと接する人、または転職活動で面接官に実務スキルを説明する人です。代理店経由で働く場合でも、社内での評価面談などで応用できます。
準備として、自分が今できることをある程度言語化できている状態が望ましいです。まだうまく言葉にできていなくても、この記事の手順に沿って整理していけば構いません。
この記事では、専門用語の細かい定義や、施策そのものの実行手順には踏み込みません。相手に何を、どんな順番で、どう伝えるかという言葉選びに絞って扱います。
03手順1|専門用語をそのまま使わない、翻訳の視点を持つ
Webマーケティングの専門用語は、業界の中では当たり前でも、クライアントには伝わらないことが多くあります。「検索順位の改善」という言葉より、「問い合わせの増加につながる集客の強化」という言葉のほうが、相手には価値として伝わりやすくなります。
翻訳の視点とは、自分がやったこと・できることを、相手が本当に知りたい結果の言葉に置き換える考え方です。専門用語を捨てる必要はなく、専門用語のあとに、相手の言葉での言い換えを添える形で十分です。
よく使う専門用語と、クライアント向けの言い換え例を一覧にしました。そのまま自分の言葉に置き換えて使ってみてください。
| 専門用語 | クライアント向けの言い換え |
|---|---|
| 検索順位の改善 | 検索結果で見つけてもらいやすくする取り組み |
| 流入数の増加 | サイトに訪れる人を増やすこと |
| コンバージョン率 | 訪れた人のうち、問い合わせや購入に至る割合 |
| 広告のCPA | 1件の問い合わせや購入にかかった広告費用 |
| リターゲティング広告 | 一度サイトを見た人にもう一度広告を届ける仕組み |
| 内部対策 | サイトの中身をクローラーと読者の両方に分かりやすく整える作業 |
| KPI設計 | 成果を判断するための具体的な数値目標づくり |
この表はあくまで一例であり、業種や相手の理解度によって適した言い換えは変わります。相手の反応を見ながら、言葉を調整していく前提で使ってください。
04手順2|実績・学習成果を「成果の言葉」に変換する
自分の経験を説明するときは、作業内容の羅列ではなく、その作業が何につながったかという成果の言葉に変換します。「記事を10本書きました」より、「10本の記事で、狙った検索キーワードからの流入経路を作りました」のほうが、実務の意図が伝わります。
学習中の内容についても、同じ考え方が使えます。「SEOの教材を終えました」ではなく、「検索意図の分析から改善提案までの一連の流れを、教材の演習で実践しました」のように、何を身につけたかを具体的な行動の言葉で示します。
05手順3|実績が少ない段階の説明の仕方
実績がまだ少ない段階では、実行した結果より、学習過程でどう考え、どう判断したかという思考の筋道を丁寧に説明することが有効です。結果を誇張して見せるより、判断の根拠を正直に示すほうが、長期的な信頼につながります。
架空の案件やポートフォリオを題材に、課題をどう捉え、どんな仮説を立てたかを説明する練習をしておくと、実際の商談でも同じ構成で話せるようになります。転職時の職務経歴書での見せ方は『Webマーケター未経験の職務経歴書、前職の経験を翻訳する5手順』でも扱っています。
思考の筋道を説明するときは、「課題→仮説→行動→振り返り」という順番を意識すると、話が組み立てやすくなります。結果が伴っていなくても、この順番で筋道立てて話せると、実務における判断力そのものは伝わります。
06手順4|実績がある段階の説明の仕方
実績がある段階では、思考の筋道より、実際に何をして、どんな結果が出たかという事実を中心に説明します。数字を示すときは、母数や期間もあわせて伝えると、説明の信頼性が高まります。
WEBMARKSの転職支援実績を見ても、内定先の職種名は単一の名前で分かれています(出典: WEBMARKS転職支援実績集計、2024年〜2025年に報告があった卒業生対象)。採用の場面では、幅広く語るより、特定の実務領域での結果を具体的に語れるかが評価される傾向がうかがえます。
同じ経験でも、相手に何を強調して伝えるかによって、受け取られ方は変わります。実績の段階に応じて、話の重心を意識的に切り替えることが、説明力を高める近道になります。
07手順5|相手の理解度に応じて説明の深さを変える
クライアントや面接官がWebマーケティングにどれだけ詳しいかは、相手によって大きく異なります。専門用語を多く使う担当者もいれば、施策の名前をほとんど知らない担当者もいます。
相手の理解度を見極める手がかりは、最初の質問や相槌の内容にあります。専門用語で質問が返ってくる相手には専門用語を使い、一般的な言葉で聞かれた相手には、成果の言葉を中心に説明を組み立てます。
初回の商談で相手の理解度を見誤ると、説明が難しすぎて伝わらなかったり、逆に基礎的すぎて物足りない印象を与えたりします。初回のヒアリングでは、相手の言葉遣いや反応を観察することも、説明の準備の一部です。初回商談で確認すべき項目は『初回商談で聞くべきこと、Webマーケターのヒアリング項目』でも扱っています。
説明の途中で相手の反応が鈍いと感じたときは、その場で深さを調整して構いません。一度出した説明を最後まで押し通す必要はなく、相手の様子を見ながら言葉を選び直す柔軟さも、実務力の一部です。
08手順6|聞かれて困る質問への切り返し方
商談や面接では、自分がまだできないことを聞かれる場面もあります。できないことをできるかのように話すと、後で信頼を損なう原因になります。
できないことは正直に伝えたうえで、代わりにどう対応するかを添えるという型が実務的です。「その領域の実務経験はまだありませんが、学習を進めており、必要であれば早めに追いつく計画を立てられます」のように、正直さと前向きな姿勢を両立させます。
この型が有効なのは、できないことを隠して契約したあとのほうが、信頼を損なうリスクが大きいためです。契約前に正直に伝えておけば、相手も対応範囲を踏まえたうえで判断できます。後から発覚するより、先に伝えるほうが結果的に関係を長く続けやすくなります。
WEBMARKSでは、現役のWebマーケターが応募前の提案書を添削し、提案の練習に付き合う体制を用意しています(出典: WEBMARKS応募前提案書添削体制)。第三者に一度説明を聞いてもらうと、答えにくい質問を事前に洗い出しやすくなります。
09つまずきポイント(失敗例つき)
説明の組み立てでよくあるつまずきを整理します。
1つ目は、専門用語をそのまま並べ、相手の言葉に翻訳しないまま話してしまう型です。自分では丁寧に説明したつもりでも、相手には内容が伝わっていないことがあります。
2つ目は、実績が少ない段階なのに、結果だけを誇張して伝えようとする型です。後から実態とのズレが分かると、それまでの信頼を一気に失うことになります。
3つ目は、できないことを聞かれたときに、話をそらしたり、あいまいにごまかしたりする型です。正直に答えないほうが、かえって不安を与えてしまいます。
4つ目は、相手の理解度を確認しないまま、いつも同じ説明を繰り返してしまう型です。専門用語に詳しい相手にも、詳しくない相手にも同じ話し方をすると、どちらにも十分に伝わりません。
5つ目は、成果の言葉に変換しすぎて、実際にやったことが曖昧になってしまう型です。成果を強調するあまり、具体的な作業内容が抜け落ちると、かえって実務経験を疑われることがあります。
10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
説明の組み立てができたかどうかは、専門知識のない第三者に聞いてもらい、何をしてきた人か・何ができる人かを説明できるかで確認できます。「なんとなく凄そう」という感想で終わる場合は、成果の言葉への変換が足りていないサインです。
もう一つの確認方法は、聞かれて困りそうな質問を自分で3つ以上リストアップし、それぞれに正直な答えを用意できているかを確認することです。答えに詰まる質問が残っている場合は、手順6の切り返し方を先に準備しておいてください。
実績がある場合は、数字を話すときに母数や期間を添えているかも確認してください。数字だけを強調すると、聞き手によっては誇張と受け取られることがあります。
最後に、専門用語だけで押し切っていないかを見直してください。手順1の言い換え表を使い、自分がよく使う専門用語をクライアント向けの言葉に置き換える練習を、実際の商談の前に一度やっておくと安心です。
11FAQ
専門用語を一切使わないほうがいいですか
一切使わないというより、専門用語のあとに相手の言葉での言い換えを添える形をおすすめします。専門用語自体は、実務を理解している証拠にもなるため、使い方次第で信頼につながります。
実績がまったく無い場合、何を話せばいいですか
実績が無い場合は、学習過程でどんな課題を見つけ、どう考えて取り組んだかという思考の筋道を話す方法があります。架空の案件を題材にした練習でも、判断の組み立て方を示す材料になります。
数字を盛って話したほうが印象は良くなりますか
盛った数字は、後から実態とのズレが分かったときに信頼を大きく損ないます。母数や期間を正直に添えたうえで、範囲や限界も含めて説明するほうが、長期的な信頼につながります。
相手の理解度が分からないとき、どう探ればいいですか
最初の質問や相槌の内容を手がかりにできます。専門用語で質問が返ってくる場合は専門用語を、一般的な言葉で聞かれる場合は成果の言葉を中心に、説明の深さを調整してください。
面接でも同じ考え方は使えますか
使えます。面接官がWebマーケティングに詳しいとは限らない点は、クライアントへの説明と同じです。専門用語と成果の言葉を使い分ける考え方は、商談でも面接でも共通しています。
説明の練習は一人でもできますか
一人でも、自分の経験を紙に書き出し、専門用語と成果の言葉の両方で言い換える練習はできます。可能であれば、第三者に聞いてもらい、伝わったかどうかを確認する工程を加えると、より実践的な練習になります。
説明が苦手な場合、スキル自体を諦めるべきですか
諦める必要はありません。説明力は、実務スキルとは別に、練習を重ねることで伸ばせる力です。この記事の手順を使って、少しずつ言葉にする練習を重ねていくことをおすすめします。
業種によって言葉選びは変えるべきですか
変えたほうが伝わりやすくなります。同じ「流入数の増加」でも、店舗ビジネスなら来店数、通販なら購入数のように、相手の事業でどんな成果につながるかを具体的に言い換えると、説明の説得力が増します。