01この記事でできるようになること
自分の稼働時間だけでは案件をこなしきれなくなった副業Webマーケターが、案件の一部を外部の協力者へ発注する手順が分かります。外注に出せる業務の切り分け方、発注時に書面で示すべき内容、利益率の確認方法までを扱います。
案件の一部を人に任せることは、自分の作業量を増やさずに対応できる範囲を広げる手段です。単価を上げる・案件数を増やす・継続契約にするという3つのレバーの全体像は『Webマーケター副業、月10万から30万へ伸ばす3つのレバー』で扱っています。この記事は、そのうち案件数を維持または増やす場面で使える手段の1つを扱います。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、複数の案件を抱えており、これ以上の稼働時間の拡大が難しい副業Webマーケターです。稼働時間そのものを伸ばす判断は『副業Webマーケター、本業と両立しながら稼働時間を伸ばす方法』で扱っています。時間を伸ばす選択肢をすでに検討済み、またはこれ以上伸ばせない状況にある場合に、この記事の内容が選択肢になります。
準備するものは、現在抱えている業務を書き出したリストです。どの業務にどれくらいの時間がかかっているかを、大まかにでも把握しておいてください。
03手順1|外注に出せる業務を切り分ける
すべての業務を外部に任せられるわけではありません。クライアントとの直接のやり取りや、戦略の判断が必要な部分は、自分で対応し続ける必要があります。一方で、定型的な制作作業は、任せやすい業務です。
| 外注に出しやすい業務 | 外注に出しにくい業務 |
|---|---|
| 記事執筆(構成が決まっている場合) | クライアントとの初回商談・戦略提案 |
| データ入力・レポートの体裁整理 | 施策の方向性の判断 |
| 簡易な競合調査・情報収集 | クライアントへの成果報告 |
| 定型フォーマットのバナー制作 | 契約条件の交渉 |
切り分けの基準は、「クライアントの信頼を左右する部分かどうか」です。信頼を左右する部分を任せてしまうと、品質のばらつきがそのままクライアントへの印象を左右してしまいます。
04手順2|発注時に書面で示す内容を決める
案件の一部を外部の協力者へ発注する立場になると、自分自身が業務委託をする側になります。フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)第三条には、業務委託をする事業者への義務が定められています。給付の内容・報酬の額・支払期日などを、書面または電磁的方法で明示することを求める内容です(参考: 公正取引委員会)。
この明示義務は、事業の規模を問わず業務委託をする側に課されます。個人で発注する場合でも対象になると考えて、書面で条件を残す習慣をつけてください。同法第四条が定める支払期日60日以内のルールが自分にも直接適用されるかどうかは、発注者側の事業規模など複数の要件によって決まります。適用の有無にかかわらず、支払期日を明確に決めておくこと自体は、トラブルを避けるうえで有効です。
発注書に書く項目(実際に使えるテンプレート)
以下の項目を、発注のたびにメッセージや書面で相手に伝えてください。
- 業務内容(何を、どこまでの範囲で依頼するか)
- 納品形式(ファイル形式、文字数や本数などの規定)
- 納期
- 報酬額
- 支払期日
- 修正対応の範囲(何回まで、どこまでの修正を含むか)
これらの項目が曖昧なまま発注すると、納品後に「思っていたものと違う」という食い違いが起きやすくなります。特に修正対応の範囲は、後からのトラブルにつながりやすい項目です。
05手順3|外注先を探す
外注先を探す経路は主に3つあります。知人や元同僚からの紹介、クラウドソーシングサービスの活用、学習コミュニティでのつながりです。それぞれ、品質の見極めやすさと探すまでの手間が異なります。
紹介による経路は、過去の実績や仕事ぶりをある程度把握したうえで依頼できる利点があります。ただし紹介できる相手が身近にいない場合は、選択肢として使えません。
クラウドソーシングサービスは、幅広い候補から探せる一方、実際の仕事ぶりを事前に把握しにくい面があります。小さな案件を1件依頼してみて、対応の質を確認してから継続を判断する進め方が現実的です。
学習コミュニティでのつながりは、スクールの同期や卒業生など、学習段階を共有した相手に依頼できる経路です。実務経験がまだ浅い相手も多いため、最初は特に小さな範囲から任せ、育てる意識で関係を築く進め方が向いています。3つの経路のどれが向いているかは、自分が求める品質と、探すためにかけられる時間のバランスで決めてください。
06手順4|品質を管理しながら任せる
初めて任せる相手には、いきなり大きな範囲を委ねるのではなく、小さな範囲から始めてください。最初の納品物を確認し、修正のやり取りを通じて、任せられる範囲を少しずつ広げていく進め方が安全です。急いで多くを任せようとすると、品質のばらつきに気づくのが遅れます。
フィードバックは、良い点と改善してほしい点の両方を具体的に伝えてください。曖昧な指摘では、次の納品でも同じ問題が繰り返される可能性があります。「読みやすくしてください」より「見出しごとに結論を先に書いてください」のように、行動に移せる粒度で伝えるほうが効果的です。
クライアントへの納品物としてそのまま使う場合は、提出前に自分で最終確認する工程を省略しないでください。外部に任せた成果物であっても、クライアントに対する責任は発注した自分にあります。
07手順5|利益率を確認する
案件の一部を外注に出すと、自分の取り分は「クライアントから受け取る報酬」から「外注先に支払う報酬」を差し引いた金額になります。この差額が、自分の稼働時間の削減分に見合っているかを確認してください。
WEBMARKSの集計では、副業案件の時給が判明している事例の平均は2,207円です。対象は時給が判明している14件で、2020年から2025年のデータです(出典: 卒業生データ集計)。この数字は母数が小さく、業界全体の相場を示すものではありませんが、自分が確保したい時間あたりの取り分を考える際の参考にはなります。
外注に出すことで浮いた時間を、新規開拓や単価交渉といった他の活動に使えるかどうかも、利益率とあわせて考えてください。時間が浮いても、その時間を有効に使えなければ、外注化の意味が薄れます。
外注化前後のシミュレーション例(架空の例)
以下は架空の例です。実在の企業名・個人名ではありません。数字は説明のための仮の値であり、実際の相場を示すものではありません。
月8本のSEO記事制作をクライアントから月16万円で受託しており、自分の稼働時間が月32時間かかっているケースを考えます。時給換算では1時間あたり5,000円です。
このうち構成案の作成とキーワード選定は自分で行い、執筆部分の4本を外注先へ1本あたり1万円で発注したとします。外注費は月4万円、自分の稼働時間は構成案作成と品質確認を合わせて月16時間に減ります。
| 項目 | 外注前 | 外注後 |
|---|---|---|
| 受託額 | 16万円/月 | 16万円/月 |
| 外注費 | 0円 | 4万円/月 |
| 自分の取り分 | 16万円/月 | 12万円/月 |
| 自分の稼働時間 | 32時間/月 | 16時間/月 |
| 時給換算 | 5,000円/時 | 7,500円/時 |
この架空の例では、受け取る報酬の金額そのものは下がるものの、時給換算では上がっています。浮いた16時間を新規開拓や他の案件に使えるかどうかが、外注化の是非を判断する分かれ目です。
08つまずきポイント(失敗例つき)
案件の外注化で、繰り返し見られるつまずき方を整理します。
1つ目は、書面で条件を示さないまま発注してしまう型です。口頭やメッセージの断片だけで進めると、報酬や納期の認識がずれたときに解決しづらくなります。
2つ目は、支払期日を曖昧にしたまま進め、支払いが遅れてしまう型です。発注する側になった以上、支払いに関する誠実な対応が、良い協力関係を保つ土台になります。
3つ目は、成果物を確認せずにそのままクライアントへ提出してしまう型です。品質の責任は、最終的に発注した自分にあります。
4つ目は、利益率を計算せずに外注を続け、気づかないうちに採算が合わなくなっている型です。外注費が少しずつ上がっていても、都度確認しなければ気づきにくいため、定期的に自分の取り分が見合っているかを見直してください。
09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
案件の外注化ができているかどうかは、次の4点で確認できます。外注に出せる業務を切り分けられているか、発注時に書面で条件を示せているか、品質を確認する体制があるか、利益率を把握できているかです。
4点がそろっていれば、無理に自分の稼働時間を増やさずに、対応できる案件の幅を広げられる状態です。稼働時間そのものを見直す判断は『副業Webマーケター、本業と両立しながら稼働時間を伸ばす方法』で扱っています。見積もりの立て方は『見積書の項目と金額、Webマーケター案件の立て方』をあわせて確認してください。
10FAQ
外注化は、稼働時間を伸ばすことと比べてどちらを優先すべきですか
一律の答えはありません。すでに稼働時間の拡大が難しい状況であれば、外注化は有効な選択肢です。両方の手段を、状況に応じて組み合わせながら使い分ける人もいます。
外注先への発注は、いくらから成立しますか
決まった下限はありません。ただし、あまりに小さな金額では、発注時の書面作成や品質確認にかかる自分の手間のほうが上回ってしまう場合があります。
発注書は毎回作らないといけませんか
継続的に同じ相手へ発注する場合でも、業務内容や報酬額が変わるたびに、書面やメッセージで条件を残しておくことをおすすめします。テンプレートを1つ用意しておけば、毎回の作成負担は小さくなります。
外注先の品質が安定しない場合、どうすればいいですか
小さな範囲から任せ、フィードバックを重ねても改善しない場合は、他の外注先を探す選択肢を検討してください。無理に同じ相手に任せ続ける必要はありません。
外注先を複数人に分散させた方がいいですか
案件が増えてきた段階では有効な選択肢です。ただし管理の手間も比例して増えるため、まずは1人の協力者との関係を安定させてから、段階的に増やす進め方をおすすめします。
時給換算で考えると、外注費が高すぎて割に合わない場合はどうすればいいですか
無理に外注化を進める必要はありません。稼働時間を伸ばす、単価を上げる、案件数を絞るといった他の選択肢とあわせて、自分の状況に合う方法を選んでください。
外注に出した成果物に問題があった場合、クライアントへの責任はどうなりますか
発注した自分が、クライアントに対する責任を負います。納品前に自分で確認する工程を、どんなに信頼している相手であっても省略しないでください。
フリーランス新法は、個人が個人に発注する場合にも関係しますか
書面明示の義務は、事業の規模を問わず業務委託をする側に課される基本的な考え方です。ただし個別の適用範囲は要件によって変わるため、公正取引委員会などの公式情報で確認してください。