01この記事でできるようになること

同じ実績でも、語り方によって単価交渉や新規提案での説得力は変わります。この記事では、実績を「作業量」ではなく「成果」で語り直す手順を、書き換え例つきで紹介します。

ポートフォリオを更新する頻度や項目そのものは『副業Webマーケター、ポートフォリオを更新し続ける頻度と項目』で扱っています。この記事は更新の頻度ではなく、同じ実績をどう言葉で語り直すかという「見せ方」に焦点を当てます。

案件数や単価がなかなか伸びない場合、実際には実務力が不足しているのではなく、実績の伝え方が力不足の印象を与えてしまっている場合があります。同じ経験でも、語り方を変えるだけで相手の受け取り方が変わることは珍しくありません。

02前提(対象読者・必要な準備)

対象読者は、すでにいくつかの案件実績がある副業Webマーケターです。実績がまだ無い場合は、まず案件を獲得するところから始める必要があるため、この記事の対象からは外れます。

準備するものは、これまでに担当した案件のリストと、可能であれば担当前後の数値(アクセス数・順位・問い合わせ数など)です。数値が手元に無い案件でも、質的な変化を書き出せれば十分です。

案件を進めている最中に数値を記録しておくと、後から振り返るときの負担が減ります。着手した時点でのアクセス数や順位をメモしておく、担当開始月と現在の状況を月ごとに書き残しておく、といった小さな習慣が、後の見せ方を大きく左右します。

03手順1|「作業量」ではなく「成果」で語る型に言い換える

多くの人は実績を語るとき、無意識に「何をしたか」を中心に説明してしまいます。「記事を10本書きました」「広告を運用しました」といった作業量の説明です。これを「その結果どうなったか」に言い換えます。

「作業量」で語る実績と「成果」で語る実績の言い換えの型 記事を10本書いた、という作業量中心の語りを、検索順位が改善した、という成果中心の語りに言い換える型を示す図。 実績の見せ方を変える基本の型 「作業量」を「成果」へ言い換える 作業量で語る 「記事を10本書きました」「広告を運用しました」→ 何をしたかで止まる 言い換え 成果で語る 「記事10本の追加で対象KWの検索順位が改善しました」→ 結果どうなったかまで語る 数値が無い案件でも、担当範囲の広がりや相手の反応を成果として語れる。 誇張はせず、事実の中から意味のある部分を選んで伝える。
「作業量」で語る実績と「成果」で語る実績の言い換えの型

「記事を10本書きました」は「記事10本の追加により、対象キーワードの検索順位が改善しました」のように言い換えられます。作業の量そのものではなく、その作業がもたらした変化に焦点を当てる型です。

成果として語れる数値が無い案件でも、担当範囲や役割の変化を成果に近い形で語ることはできます。「当初は記事執筆のみだったが、途中からキーワード選定や構成案の作成も任されるようになった」という記述は、信頼を積み重ねた成果として読めます。

この言い換えの型は、広告運用やSNS運用など、数値が取得しやすい業務ほど効果を実感しやすい傾向にあります。一方で、構成案の作成や進行管理のように数値化しにくい業務でも、任された範囲がどう広がったかという事実そのものを成果として語ることができます。数値の有無にかかわらず、まずは「何をしたか」の後に「その結果どうなったか」を続けて書く習慣をつけてください。

04手順2|before/afterの比較を作る

数値が手元にある案件では、着手前と着手後を並べて比較する形にまとめます。数値が無い案件では、状態の変化を言葉で比較します。

before/afterの比較で実績を語る型 数値がある場合はbefore/afterの数値比較、数値が無い場合は状態の変化を言葉で比較するという、2つの型を示す図。 before/afterで実績を語る2つの型 数値がある場合 着手前 検索順位 圏外 着手後(3か月) 検索順位 10位以内 数値が無い場合 着手前 記事執筆のみ担当 着手後 構成案の設計まで担当 母数・期間もセットで書き残すと、後から使うときの説得力が保たれる。
before/afterの比較で実績を語る型(数値がある場合・数値が無い場合それぞれの整理)

比較を作るときは、変化の要因を自分の対応だけに限定しすぎないよう注意してください。市場環境やクライアント側の他の施策も影響している場合があります。「◯◯の施策も並行して行われたなかで」といった前提を添えると、誠実な語り方になります。

数値を扱う際は、母数や期間も一緒に記録しておいてください。「順位が改善した」だけでは、どの程度の変化かが伝わりません。「対象キーワード10語のうち7語で順位が改善した」のように、範囲を添えて書く形が具体的です。「3か月間で問い合わせ数が増加した」のように、期間もセットで書き残しておくと、後から単価交渉の材料として使うときにも説得力が保たれます。

実績の書き換え例(架空の例)

以下は架空の例です。実在の企業名・個人名ではありません。同じ案件を、作業量中心の語りと成果中心の語りで書き換えた例です。

書き換え前(作業量中心)書き換え後(成果中心)
SEO記事を月8本納品しました記事8本の継続納品により、対象カテゴリの流入が着任前と比べて増加しました
広告のクリエイティブを作成しましたクリエイティブを刷新した結果、クリック率が改善し、担当者から継続の打診をいただきました
週次でレポートを提出しました週次レポートに改善提案を添えて提出し続けたことで、次期の契約範囲拡大につながりました

数値を伴わない案件でも、行動とその後の反応(継続の打診、契約範囲の拡大など)をセットで語ることで、成果に近い説得力を持たせられます。

05手順3|匿名化のルールを決めて、安全に開示する

クライアント名や具体的な金額を実績として開示できるかどうかは、案件ごとに異なります。開示できない情報は、業種やクライアント規模といった抽象化した形で語る必要があります。

「A社」「Bというジャンルの企業」といった匿名化のルールを、自分の中であらかじめ決めておくと、案件が増えるたびに迷わず統一した形で語れるようになります。個人が特定できる情報や、契約で開示を禁じられている情報は載せないでください。

契約書に守秘義務の条項がある場合は、その範囲を確認したうえで語る内容を決めます。守秘義務の範囲が分からない場合は、クライアントに直接確認するか、業種や規模といった抽象化した情報にとどめておくと安全です。開示してよいかどうか迷う情報は、開示しない方向で判断することをおすすめします。一度開示してしまうと取り消すことは難しいためです。

06手順4|相手によって見せ方を変える

実績の語り方は、直接のクライアントに見せる場合と、代理店やエージェント経由で見せる場合とで、重視される点が変わります。直接のクライアントは自社の課題にどう対応してくれるかを重視しやすく、代理店は実務の再現性や対応範囲の広さを重視しやすい傾向があります。

直接クライアント向けと代理店向けで実績の語り方の重点が変わる比較 直接クライアントには個別の課題対応、代理店には対応範囲の広さや実務の再現性が重視されやすいという、相手による重点の違いを示す図。 相手によって変わる、実績の重点 直接クライアント向け ・その企業固有の課題への対応・個別性のあるエピソード・信頼関係の積み重ね 代理店向け ・対応範囲の広さ・実務の再現性・複数案件の並行対応力 同じ実績でも、相手の関心に合わせて強調点を選ぶ(内容を偽ることではない)。
直接クライアント向けと代理店向けで、実績の語り方の重点が変わる比較

同じ実績でも、相手の関心に合わせて強調する部分を変えることは、内容を偽ることではありません。事実の中から、相手にとって意味のある部分を選んで伝える工夫です。

代理店経由の案件では、案件の規模感や対応範囲の広さ、複数のクライアントを並行して対応できる実務力が評価されやすい傾向にあります。直接クライアントとの商談では、その企業固有の課題にどう向き合ったかという個別性のあるエピソードのほうが響きやすい場面が多くなります。1つの実績から複数の語り方を用意しておくと、相手に応じて使い分けられます。

07手順5|複数の小さな実績を1つのストーリーにまとめる

単発の実績が複数ある場合、それぞれを個別に語るより、時系列でつなげて1つのストーリーとして語る方が、成長の軌跡として伝わりやすくなります。

「最初は記事執筆のみを担当し、次第にキーワード選定を任され、最終的には構成案の設計まで担当するようになった」というように、担当範囲の広がりを時系列で示す型です。単価交渉の場面でも、この成長の軌跡は有力な材料になります。

副業Webマーケターの単価交渉のタイミングについては『副業Webマーケター、初回単価から値上げ交渉するタイミング』で扱っています。実績の語り方を整えておくことは、値上げ交渉の材料を用意することにも直結します。

ストーリーとしてまとめる際は、時系列の古い順に並べるだけでなく、「最初の状態」と「現在の状態」を先に示してから、その間の経緯を説明する構成も効果的です。結論を先に示すことで、相手が話の要点をつかみやすくなります。細かい経緯をすべて語る必要はなく、成長の転換点になった出来事を2〜3個選んで語る程度で十分に伝わります。

08つまずきポイント(失敗例つき)

実績の見せ方を変える際に、よく見られるつまずき方を整理します。

  • 作業量の説明から抜け出せず、何をしたかばかりを語ってしまう
  • 数値が無い案件を実績から外してしまい、語れる材料自体が減ってしまう
  • 成果を誇張しすぎて、実態と語りの内容にズレが生じる
  • 匿名化のルールを決めずに開示し、後から契約上の問題に気づく
  • 相手によって重視される点が違うことに気づかず、同じ語り方を使い回してしまう

これらの多くは、実績を「量」でしか捉えていないことから起きます。数値が無い案件でも、担当範囲の変化や相手の反応を材料にできることを意識してください。

特に注意したいのは、成果の誇張です。実際には複数の要因が重なって生まれた結果を、自分の対応だけによる成果として語ると、後から事実確認を求められたときに説明できなくなります。誠実に語ることは、遠回りに見えても、長期的な信頼につながります。

09完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

この記事の手順が完了したかどうかは、次の3点で確認できます。作業量ではなく成果で語れる実績が1つ以上あるか、匿名化のルールを決められたか、そして相手によって語り方を変える準備ができているかです。

3点がそろっていれば、実際の単価交渉や新規提案の場面で活用する段階です。スキルシートでの実務レベルの表現方法は『スキルシートの実務レベル表現、Webマーケターの書き方』もあわせて確認してください。

見せ方は一度整えたら終わりではありません。案件が増えるたびに、新しい実績を同じ型で書き加えていくことで、ストーリー全体の厚みが増していきます。定期的に見直す機会を作り、古い実績を今の水準に合わせて表現し直すことも意識してください。

10FAQ

数値の実績が1つも無い場合、この方法は使えますか

使えます。担当範囲の変化や、クライアントからの継続の打診といった反応も、成果に近い材料として語れます。

実績を誇張して伝えることと、成果で語ることは同じですか

異なります。成果で語ることは事実の中から意味のある部分を選ぶ工夫であり、実態にない成果を語ることではありません。

クライアント名を出さずに実績を語ると、説得力が下がりませんか

業種や規模といった抽象化した情報でも、具体的な変化とセットで語れば十分な説得力を持たせられます。名前そのものより、変化の中身のほうが相手の判断材料になります。

代理店経由の案件でも、成果を語ってよいですか

契約で禁じられていない範囲であれば語れます。開示の可否は、契約内容を確認したうえで判断してください。迷う場合は代理店の担当者に確認することをおすすめします。

実績のストーリーは、どのくらいの期間分をまとめればいいですか

一律の期間はありません。担当範囲が広がった経緯が伝わる範囲であれば、数か月分でも数年分でも構いません。無理に長い期間を詰め込むより、変化が分かりやすい範囲に絞るほうが伝わりやすくなります。

成果が出なかった案件は、実績として語らないほうがいいですか

成果が出なかった理由を分析し、その後どう対応したかまで語れる場合は、むしろ実務対応力を示す材料になります。

見せ方を変えるだけで、単価は本当に上がりますか

見せ方だけで単価が決まるわけではありません。実務の質が前提にあったうえで、それをどう伝えるかが交渉の説得力を左右するという位置づけで捉えてください。見せ方だけを整えても、実務の裏付けが伴わなければ、長期的な信頼にはつながりません。