01この記事でできるようになること
この記事を読むと、独立Webマーケターが事業拡大のために融資を受けるまでの手順が分かります。資金使途の明確化から、事業計画書の作成、必要書類の準備、申込み先の選び方、面談までを扱います。
先に断っておきます。この記事の手順を踏んでも、融資が受けられることを保証するものではありません。審査の可否は金融機関側の判断であり、この記事はその手前の準備を整えるためのものです。
02前提(対象読者・必要な準備)
対象読者は、外注化・設備投資・広告費の先行投資など、事業拡大のためにまとまった資金が必要になった独立Webマーケターです。単価改定・チーム化を含む、続ける段階の全体像は『独立Webマーケターの単価改定とチーム化、事業を伸ばす道筋』で整理しています。
生活費そのものが不足している状態の資金繰りは、この記事の対象外です。その場合は先に『独立Webマーケター、案件が切れたときの立て直し手順』を確認してください。
準備しておくものは、直近の確定申告書または決算書、資金使途の具体的なイメージ、必要な金額の見積りです。これらが曖昧なままでは、事業計画書を作成する段階でつまずきます。特に資金使途は、後から変更しにくい前提になるため、着手前にできるだけ具体的にしておくことをおすすめします。
独立Webマーケターが利用しやすい融資の窓口には、大きく2つあります。日本政策金融公庫からの直接融資と、信用保証協会の保証を付けた民間金融機関からの融資(制度融資)です。この記事では、開業から一定期間が経った事業者でも申し込みやすい、前者を中心に扱います。
03手順1、資金使途と必要額を明確にする
最初にやることは、何にいくら必要かを明確にすることです。外注費なのか、広告費の先行投資なのか、設備投資なのかによって、必要な金額も返済計画の立て方も変わります。
資金使途が曖昧なまま、借りられるだけ借りるという考え方は避けてください。必要以上の借入は、返済負担として後々の資金繰りを圧迫します。逆に必要額を少なく見積もりすぎると、資金が足りずに事業拡大が中途半端になってしまうこともあります。
04手順2、事業計画書を作成する
資金使途が固まったら、事業計画書を作成します。過去の実績、今後の売上見込み、資金の使いみち、返済計画をまとめた書類です。
売上見込みは、根拠のある数字で示す必要があります。直近の受注実績や、契約済みの案件の見込みなど、裏付けのある情報を基に組み立ててください。希望的観測だけの数字は、審査の段階で説得力を欠きます。
事業計画書には、一般に4つの要素が含まれます。過去の実績、今後の売上見込み、資金の使いみち、返済計画です。この4つが互いに矛盾しないよう、数字を組み立てることが重要です。
それぞれの要素は独立して作るのではなく、実績を出発点に見込みを立て、見込みに見合う資金使途と返済計画を積み上げるという順序で組み立てると整合性が取りやすくなります。返済計画だけ強気の数字にして、売上見込みと整合していないと、審査担当者に不自然さを感じさせてしまいます。
資金使途と調達内訳を整理するときは、表にまとめると分かりやすくなります。仮の記入例を示します。
| 資金使途の項目 | 金額のイメージ | 調達方法のイメージ |
|---|---|---|
| 外注ディレクター1名分の委託費(半年分) | 90万円 | 融資 |
| 提案・請求管理ツールの年間利用料 | 20万円 | 自己資金 |
| 広告費の先行投資 | 40万円 | 融資 |
| 予備費 | 10万円 | 自己資金 |
この表は考え方を示すための仮の例であり、実際の金額は自分の事業計画に合わせて作成してください。すべてを融資でまかなうのではなく、自己資金と融資を組み合わせる考え方も選択肢の1つです。項目ごとに調達方法を分けて書くと、審査担当者にも計画の妥当性が伝わりやすくなります。
05手順3、必要書類を準備する
事業計画書に加えて、直近の確定申告書または決算書、本人確認書類、見積書(設備投資が資金使途の場合)などを準備します。書類の不足は審査の遅れに直結します。
税金の未納がある場合は、審査に影響する可能性があります。融資を検討する前に、納税状況を確認しておくと安心です。
06手順4、申込み先を選ぶ
独立Webマーケターが検討しやすい選択肢の1つが、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。新たに事業を始めた方に加え、事業開始からおおむね7年以内の事業者も対象になります。融資限度額や返済期間は事業内容によって異なるため、詳細は公式サイトで確認してください。
もう1つの選択肢は、信用保証協会の保証を付けて民間金融機関から借りる、いわゆる制度融資です。中小企業庁によると、信用保証協会の保証とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際に信用保証協会が債務保証を行う制度です(出典: 中小企業庁「信用保証協会について」)。取引のある金融機関を通じて申し込む形になるため、日頃から口座を持ち、やり取りのある金融機関があると相談しやすくなります。
どちらを選ぶかは、取引のある金融機関の有無や、希望する金額・条件によって変わります。日本政策金融公庫は開業間もない事業者でも申し込みやすい制度が用意されている一方、信用保証協会付き融資は地域の金融機関との関係を軸に進める点が特徴です。どちらか一方に絞らず、両方の窓口に相談してから決める進め方も選べます。
07手順5、面談を受ける
申込み後は、担当者との面談があります。事業計画書の内容について、資金使途や返済の見通しを具体的に説明できるように準備しておいてください。
面談では、事業計画書に書いた数字の根拠を聞かれることが一般的です。売上見込みの裏付けとなる実績や契約状況を、資料として持参できると説明がしやすくなります。
質問に対して曖昧な答えを返すと、計画の実現可能性そのものを疑われかねません。想定される質問には、事前に自分の言葉で答えを用意しておくことをおすすめします。特に、資金使途の優先順位や、売上が計画を下回った場合の対応については、聞かれやすい論点です。
08手順6、融資実行後の資金管理を整える
融資が実行されたら、資金使途どおりに使い、返済計画に沿って返済していきます。事業用の口座と生活費の口座を分けておくと、資金の流れを管理しやすくなります。返済のスケジュールは、カレンダーやツールで管理し、資金繰りの見通しに組み込んでおくと安心です。
借りた資金を当初の資金使途とは違う用途に流用すると、次回以降の融資審査に影響する可能性があります。
09つまずきポイント(失敗例つき)
よくあるつまずきの1つは、事業計画書の売上見込みに根拠が無いことです。「今後伸びるはず」という感覚だけで数字を作ると、審査担当者から具体的な質問をされたときに答えられなくなります。
もう1つのつまずきは、必要書類の準備不足で審査が長引くことです。確定申告書や見積書をあらかじめ揃えておかないと、申込みから融資実行までの期間が延びてしまいます。
資金使途と申込み内容が一致していないつまずきも見られます。実際は生活費の補填が目的なのに、事業拡大の資金として申し込むと、審査の過程で整合性が取れなくなります。
税金の未納を放置したまま申し込むつまずきもあります。融資を検討する段階で、まず納税状況を確認しておくことをおすすめします。
すべての資金需要を融資でまかなおうとするつまずきもあります。自己資金をまったく用意せず、必要額の全額を借入に頼ると、返済負担が重くなりやすくなります。審査でも自己資金の有無を見られる場合があります。手順2で示した資金使途・調達内訳の表のように、自己資金と融資を組み合わせて考える視点を持っておくと、計画に無理が出にくくなります。
WEBMARKSの受注額集計では、受講生・卒業生の継続案件・実績を基にした受注額は年間2億円規模です(出典: WEBMARKS受注額集計、下限値ベース算出)。この規模の受注が積み上がる過程では、外注化のための資金需要が生じる場面も出てきます。事業計画書の売上見込みは、こうした自分自身の実績データを根拠にすると説得力が増します。
10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)
- 資金使途と必要額を明確にした
- 根拠のある売上見込みで事業計画書を作成した
- 確定申告書・決算書などの必要書類を揃えた
- 申込み先(日本政策金融公庫または信用保証協会付き融資)を決めた
- 面談で説明できるよう、事業計画書の内容を整理した
- 事業用と生活費の口座を分ける準備をした
- 返済のスケジュールを、資金繰りの見通しに組み込んだ
11FAQ
独立して間もない段階でも融資は受けられますか
制度によります。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める方も対象です(出典: 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」)。ただし、実績が少ない段階では、事業計画の説得力がより重要になります。
融資と補助金、どちらを先に検討すべきですか
資金使途によります。補助金は対象となる経費や採択の可否が限定的である一方、融資は使いみちの自由度が比較的高いという違いがあります。この記事では融資を中心に扱っています。
融資を受けると法人化しなければなりませんか
必ずしもそうではありません。個人事業主のままでも、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資を利用できる制度があります。法人化の判断基準は『Webマーケターの法人化ライン、売上のどこで判断するか』で扱っています。
融資を受けずに事業を拡大する方法もありますか
あります。外注化や設備投資の規模を抑え、手元資金の範囲で段階的に拡大する進め方も選べます。独立初年度の資金計画の考え方は『独立初年度のWebマーケター、資金計画と生活防衛費の設計』で扱っています。
融資の審査に落ちた場合はどうすればよいですか
事業計画書の内容を見直し、売上見込みの根拠を補強したうえで、時期を改めて再申込みを検討する進め方が一般的です。
日本政策金融公庫と信用保証協会付き融資、両方に同時に申し込めますか
制度上は可能な場合がありますが、それぞれの窓口での審査が別々に進みます。まずは自分の状況に合う窓口を1つ選び、担当者に相談しながら進める方法が現実的です。
融資の金額はどのように決めればよいですか
必要な資金使途を積み上げたうえで、返済できる範囲に収まっているかを確認して決めます。手順2で示した資金使途・調達内訳の表を作り、自己資金でまかなえる部分と融資に頼る部分を分けて考えると、金額の根拠を説明しやすくなります。