01この記事でできるようになること

主軸スキルに次の1つを重ねるべきか、そのタイミングをどう判断すればいいかが分かるようになります。単価が伸び悩んだときに、闇雲に新しいスキルへ手を伸ばす前に、何を確認すべきかを手順で示します。

この記事では、複数スキルを組み合わせる判断と進め方を扱います。SEOの内部対策や広告の入札設定といった、追加スキルそのものの習得手順には踏み込みません。

対象は、すでに1つのスキル領域で実務経験があり、単価や案件の幅を伸ばしたいと考えているWebマーケターです。スキルと案件・年収のつながり方の全体像は『Webマーケターのスキルは、案件と年収にどうつながるか』で先に整理していますので、まだの方は先に読むことをおすすめします。

02前提(対象読者・必要な準備)

この手順が向いているのは、主軸スキルが実務でこなせる段階に達している人です。学習中の段階でいきなり2つ目のスキルを広げると、どちらも実務レベルに届かないまま時間だけが過ぎるリスクがあります。

準備として、これまでに受けた案件や、断った依頼の記録があると手順3以降がスムーズに進みます。記録が無い場合は、思い出せる範囲でメモを作るところから始めてください。

この記事は、副業・転職・独立のどの進路でも使える考え方を扱います。ただし転職の場合は、スキルを組み合わせることより、1つの職種名で実務経験を証明することが優先されやすい点は先に押さえておいてください。

もう一つの準備は、時間の見積もりです。新しいスキルの学習と、既存の案件対応を同時に進めるには一定の稼働時間が要ります。無理な計画を立てると、どちらも中途半端になりやすいため、まずは小さく始める前提で予定を組んでください。

03手順1|今の主軸スキルの到達レベルを確認する

主軸スキルの到達レベルと、次に取るべき一手の対応関係 学習中・実務でこなせる・高単価案件で評価されるという3段階を高さの異なる棒で表した図。学習中の段階では主軸に集中すべきこと、実務でこなせる段階では深さを追うべきこと、高単価案件で評価される段階になって初めて2つ目のスキルを検討してよいことを、各段階の下に「次の一手」として示す。 主軸スキルの段階と、次に取るべき一手 段階によって、スキルを増やすべきかどうかは変わる 学習中 実務でこなせる 高単価案件で評価 次の一手 主軸1つに集中 次の一手 主軸の深さを追う 次の一手 2つ目を検討開始 段階の目安であり、実際の判断は案件・クライアントごとに異なります。
主軸スキルの到達レベル(学習中・実務でこなせる・高単価案件で評価される)と、次の一手の対応関係

最初の手順は、スキルを増やす前に、今の主軸スキルがどの段階にあるかを確認することです。学習中の段階で幅を広げると、どの領域も実務レベルに届かないまま停滞しやすくなります。

3段階の目安は、学習中・実務でこなせる・高単価案件で評価される、という区分です。主軸スキルが実務でこなせる段階に届いていない場合は、まずそこに集中することを優先してください。

主軸スキルが高単価案件で評価される段階に近いなら、次のスキルを重ねる余地が生まれます。逆にまだ実務でこなせる段階の入り口なら、幅を広げるより深さを追うほうが単価には効きやすい傾向があります。

04手順2|単価が伸び悩む要因を「幅」か「深さ」かで切り分ける

単価の伸び悩みが「幅」の不足か「深さ」の不足かを見分ける分岐 単価が伸び悩んでいるという起点から、他の施策も頼まれることが多いかどうかで2方向に分岐するフローチャート。頼まれることが多い場合はスキルの幅の不足と判定して隣接領域の追加を検討し、施策の理由をうまく説明できない場合は主軸スキルの深さの不足と判定して主軸の実務レベルを先に上げる、という2つの結論に至ることを示す。 単価の伸び悩み、幅か深さかの見分け方 直近の商談で聞かれた質問を振り返って判定する 単価が伸び悩んでいる 直近の商談・案件を振り返る 他の施策も頼まれる ことが多い 施策の理由をうまく 説明できない ことが多い 幅の不足と判定 隣接領域の追加を 検討する 深さの不足と判定 主軸の実務レベルを 先に上げる 両方に心当たりがある場合は、深さの不足を先に確認してください。
単価の伸び悩みが「スキルの幅」の不足か「主軸スキルの深さ」の不足かを見分ける分岐

単価が伸びない理由は、スキルの種類が少ないからとは限りません。主軸スキルの説明力や判断力が、まだ高単価案件で評価される段階に届いていないことが原因の場合もあります。

見分け方は、直近の商談や案件で聞かれた質問を振り返ることです。他の施策もお願いできますかと聞かれることが多いなら幅の不足、なぜこの施策を選んだのですかという質問にうまく答えられないなら深さの不足のサインです。

伸び悩みのサイン主な要因優先すべき動き
他の施策もまとめて頼みたいと言われるスキルの幅隣接領域の追加を検討する
施策の理由をうまく説明できない主軸スキルの深さ主軸の実務レベルを先に上げる
案件は取れるが単発で終わる継続提案力・説明力単価改定の伝え方を見直す

この切り分けを誤ると、幅を広げても単価が伸びない状態が続きます。まず主軸スキルの深さを確認し、それでも足りないと判断できたときに、次のスキルの検討へ進んでください。

WEBMARKSの単価データでは、副業案件の平均時給は2,207円です。この数字は時給が判明している14件だけの平均であり、母数が小さい点に注意してください(出典: WEBMARKS単価データ、2020年〜2025年)。

この数字はスキルの幅と深さを分けて集計したものではありません。単価の水準を把握する参考値として使い、スキルを増やせば自動的にこの水準を超えられると決めつけないでください。

05手順3|案件・クライアントから、対応できなかった依頼を記録する

次に、実際に受けた相談のうち、対応できずに断った・外注した依頼を記録します。これは想像で決めるより確度の高い、追加スキル候補の絞り込み材料になります。

WEBMARKSの案件獲得データでは、2案件以上を獲得した人の割合が70%を超えています。対象は2020年から2025年の案件獲得データです(出典: WEBMARKS案件獲得データ集計)。

複数案件を並行して持つこと自体は珍しくありませんが、この数字は案件数の実測であり、どのスキルを組み合わせると単価が伸びるかまでは示していません。自社データには、スキルの組み合わせと単価の関係を直接結びつけた集計がありません。

そのため、この記事では「このスキルを足せば単価が上がる」という断定はせず、実際に断った依頼という一次情報から判断材料を作る方法を示します。記録の形式は簡単なもので構いません。

日付・依頼内容・断った理由の3項目を、案件が発生するたびにメモしておくと、半年から1年でパターンが見えてきます。パターンが見えてきたら、次の手順で候補を絞り込みます。

06手順4|追加スキル候補を2〜3個に絞り、優先順位をつける

手順3の記録がたまったら、頻度の高い依頼から2〜3個の候補に絞ります。すべてを同時に学ぼうとすると、どれも実務レベルに届かないまま中途半端になりやすいためです。

SEOと広告運用のどちらを優先すべきかという具体的な判断は『SEOと広告運用、どちらのスキルの方が単価が伸びやすいか』で扱っています。

優先順位のつけ方は、頻度が高い依頼を優先するだけでなく、今の主軸スキルとの相性も考慮します。SEOとコンテンツ制作のように工程が近い組み合わせは、学習の負荷が比較的小さくなります。

07手順5|既存クライアントに新しいスキルを小さく試す機会をつくる

学習・小さな試行・本格提案という時間軸で見る、既存クライアントへの試し方 左から右へ、学習、既存クライアントでの小さな試行、本格提案という3つの時期を並べた時間軸の図。小さな試行の期間は損害の少ないタスクに限定し、進め方をこまめに報告すること、本格提案は小さな試行で実務レベルを確認できてから行うことを示す。 既存クライアントへの試し方、3つの時期 本格提案の前に、小さな試行の期間を必ず挟む 学習 実務でこなせる 段階を目指す 小さな試行 損害の少ない タスクに限定 経過をこまめに報告 本格提案 単価改定を あわせて検討 期間の長さは案件によって異なり、自社データに一律の目安はありません。
学習・小さな試行・本格提案という時間軸で、既存クライアントへの試し方を示す図

新しいスキルを本格的に営業する前に、既存クライアントとの関係の中で小さく試す機会を作ることをおすすめします。ゼロから新規開拓するより、信頼関係がある相手のほうが、多少の不慣れさを許容してもらいやすいためです。

試す範囲は、失敗しても大きな損害にならない小さなタスクに限定してください。無償で引き受ける必要はありませんが、実績作りの段階であることを正直に伝え、価格を抑えて提案する方法もあります。

小さな試行を経験してから本格的に提案することで、実際の実務レベルを自分で確認できます。この段階を飛ばして高単価の提案をすると、対応しきれずに信頼を損なうリスクが高まります。

試行の期間中は、成果の良し悪しにかかわらず、途中経過をこまめに報告することをおすすめします。結果が出る前の段階でも、進め方を丁寧に共有しておくと、その後の本格提案がスムーズに進みやすくなります。

08手順6|単価改定のタイミングと伝え方を設計する

新しいスキルが実務でこなせる段階に届いたら、単価改定のタイミングを検討します。案件を増やすか単価を上げるかという優先順位の考え方は『案件を増やすか単価を上げるか、副業Webマーケターの優先順位』で扱っています。

専門特化を続けるか、複数スキルを扱う戦略に切り替えるかという判断基準は『専門特化か広く浅くか、Webマーケターのスキル戦略』も参考にしてください。

単価改定は、スキルを増やした直後ではなく、新しいスキルで実際に成果を出してから伝えるほうが説得力を持ちます。焦って値上げを切り出すより、実績を1つ作ってから相談するほうが、関係を壊さずに進めやすくなります。

09つまずきポイント(失敗例つき)

複数スキルを組み合わせる場面でよく起きるつまずきを整理します。

1つ目は、主軸スキルが実務でこなせる段階に届く前に、2つ目のスキルへ手を広げてしまう型です。結果として、どちらも中途半端な実務レベルにとどまり、単価はむしろ伸びにくくなります。

2つ目は、断った依頼を記録せず、勘だけで追加スキルを決めてしまう型です。実際の需要と離れたスキルを学んでしまい、学習した時間に見合う案件につながらないことがあります。

3つ目は、新しいスキルを学んだ直後に、実績が無いまま高単価の提案をしてしまう型です。小さな試行を飛ばすと、対応しきれずに信頼を損なうリスクが高まります。

4つ目は、単価改定を切り出すタイミングを逃し続け、スキルは増えているのに単価だけが据え置かれる型です。実績ができたら、早めに相談の機会を作ることが大切です。

5つ目は、複数のスキルを持っていること自体を、クライアントに伝える言葉にできていない型です。実務レベルに達していても、相手に伝わらなければ単価には反映されません。スキルをどう説明するかという言葉選びは、別の視点として押さえておく価値があります。

10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

以下の項目で、この記事の手順を実践できたかどうかを確認してください。

  • 主軸スキルが実務でこなせる段階に届いていることを確認した
  • 単価の伸び悩みが「幅」の不足か「深さ」の不足かを切り分けた
  • 断った依頼を3件以上記録し、傾向を確認した
  • 追加スキル候補を2〜3個に絞り込んだ
  • 既存クライアントに新しいスキルを小さく試す機会を1つ作った
  • 単価改定を伝えるタイミングと言葉を準備した

すべてを一度に満たす必要はありません。手順1〜3は今すぐ着手でき、手順4〜6は実際の案件が発生してから進める性質のものです。

11FAQ

スキルはいくつまで組み合わせてよいですか

上限を定める自社データはありません。ただし、実務レベルを維持できる領域の数には限りがあるため、まずは1つ足す段階から始めることをおすすめします。

主軸スキルがまだ実務でこなせる段階でなくても、並行して学んでいいですか

並行学習自体は可能ですが、優先順位は主軸スキルに置いてください。主軸が固まる前に幅を広げると、どちらも実務レベルに届きにくくなります。

断った依頼が少なく、記録がたまりません

案件数が少ない段階では、商談や問い合わせの中で対応できますかと聞かれた内容もあわせて記録してください。実際の受注にならなくても、需要の手がかりになります。

新しいスキルを試す機会が既存クライアントに無い場合はどうすればいいですか

その場合は、小規模な新規案件やポートフォリオ制作で試す方法があります。既存クライアントでの試行が最も信頼を得やすい方法ですが、唯一の方法ではありません。

スキルを増やしても単価が上がらない場合、何を見直せばいいですか

まず手順2の切り分けに戻り、主軸スキルの深さが十分かを再確認してください。幅を広げる前に、主軸の説明力・判断力が不足していないかを見直すことが優先です。

転職を考えている場合も、この手順は使えますか

転職では、複数スキルを持つことより、1つの職種名で実務経験を証明できるかが優先されやすい傾向があります。進路が転職中心の場合は、その優先順位を踏まえて手順を使い分けてください。

この手順にかかる期間の目安はありますか

案件の頻度や学習の進め方によって差が大きく、自社データにも一律の期間を示す集計はありません。焦って期間を決めるより、手順どおりに1つずつ進めることをおすすめします。

既存クライアントに新しいスキルの話を切り出すのが不安です

いきなり営業として持ちかけるのではなく、雑談の延長で「実は他の領域も勉強していて」と伝える程度から始める方法があります。相手の反応を見ながら、小さな依頼につなげていけば負担は小さく済みます。

スキルを増やすより、単価交渉だけで対応することはできますか

案件によっては可能です。単価交渉の実額の目安や記録の取り方は、案件獲得デスクの関連記事で扱っていますので、スキルを増やす前にまず交渉から試す選択肢も検討してください。