01この記事でできるようになること

自分のスキルを年に1回のペースで棚卸しし、次の1年で何を伸ばすべきかを具体的に決められるようになります。感覚だけで判断せず、記録として残す型を身につけます。

この記事では、棚卸しのやり方という手順を扱います。SEOや広告運用そのものの学習手順には踏み込みません。スキルと案件・年収のつながり方の全体像は『Webマーケターのスキルは、案件と年収にどうつながるか』で先に整理していますので、まだの方は先に読むことをおすすめします。

対象は、すでに何らかの実務経験があるWebマーケターです。学習中の段階でも、簡易版として使える型ですが、まずは1年分の案件や学習の記録が必要になります。

02前提(対象読者・必要な準備)

準備として、この1年で取った案件や、学習した内容の記録があると棚卸しがスムーズに進みます。記録が無い場合は、思い出せる範囲でメモを作るところから始めてください。

もう一つの前提は、棚卸しの結果を素直に受け止める姿勢です。得意な領域だけでなく、手つかずのままの領域も正直に記録することが、次の学習計画の精度を左右します。

この手順は、副業・転職・独立のどの進路でも使えます。ただし転職活動中は、棚卸しの結果を職務経歴書の準備に直結させる使い方になります。

準備に時間をかけすぎる必要はありません。最初の1回は、荒い記録からで構わないので、まず1年分を振り返ることを優先してください。精度は2回目以降の棚卸しで自然に上がっていきます。

03手順1|棚卸しのタイミングを年に1回に固定する

年次スキル棚卸しの1年サイクル 棚卸しの実施、通年での学習・案件での実践、翌年の棚卸しで比較という3つの段階を横に並べ、最後の段階から最初の段階へ曲線の矢印で戻ることで、1年ごとに繰り返すサイクルであることを示す図。 年次スキル棚卸しの1年サイクル 実施して終わりではなく、翌年また比較して繰り返す 棚卸し実施 6領域を3段階で 記録 通年で実践 学習・案件で 計画を実行 翌年また棚卸し 前回の記録と 比較する 1年ごとに、このサイクルを繰り返します 実施する時期は、案件が落ち着いている月を選ぶと記録の粒度が保てます。
年次スキル棚卸しの1年サイクル、いつ何を確認するか

最初の手順は、棚卸しを行うタイミングを毎年同じ時期に固定することです。案件の状況や自分の実務レベルは、思っている以上に少しずつ変化しています。

年に1回というペースは、市場や案件の傾向が大きく変わるサイクルに合わせた目安です。月ごとに細かく見直すと変化が見えにくく、逆に数年に1回では対応が遅れやすくなります。

固定するタイミングは、誕生日や年度の変わり目など、自分にとって覚えやすい時期を選んでください。カレンダーやリマインダーに登録しておくと、実施を先延ばしにしにくくなります。

案件が立て込んでいる時期を避け、比較的落ち着いているタイミングを選ぶことも大切です。急いで済ませてしまうと、記録の粒度が粗くなり、翌年の比較材料として使いにくくなります。

04手順2|6つの実務領域を3段階で記録する

6つの実務領域を3段階で記録するセルフチェックマトリクスの例 SEO・広告運用・データ分析・コンテンツ制作・生成AI活用・ディレクションという6つの実務領域を縦に並べ、学習中・実務でこなせる・高単価案件で評価されるという3つの段階を横に並べた表形式の図。領域ごとに、現在の到達段階に印をつけて記録する使い方の例を示す。 6領域×3段階のセルフチェック(例) 領域ごとに、今の到達段階へ印をつけて記録する 学習中 実務でこなせる 高単価評価 SEO 広告運用 データ分析 コンテンツ制作 生成AI活用 ディレクション 緑の印が現在の段階。領域名は例であり、実際の6分類は本文のリンク先で確認してください。
6つの実務領域×3段階(学習中・実務でこなせる・高単価案件で評価される)のセルフチェックマトリクス

次に、Webマーケティングの実務スキルを6つの領域に分け、それぞれが学習中・実務でこなせる・高単価案件で評価される、のどの段階にあるかを記録します。全体マップの詳細は『Webマーケターの実務スキル全体マップ、6領域と案件のつながり』で確認できます。

記録するときは、根拠となる具体的な案件名や成果もあわせてメモしてください。段階だけを記録すると、翌年に見返したときに、なぜその段階だと判断したのかを思い出せなくなります。

この記録は、自己評価であることを前提に行います。多少甘めに見積もっても、翌年の記録と比較すれば、伸びているかどうかの傾向は把握できます。

領域によっては、この1年でまったく触れていないものもあるはずです。触れていない領域は無理に評価をつけず、「今年は対象外」として空欄のまま残しておいて構いません。

05手順3|この1年で取った案件・断った依頼を書き出す

段階の記録に加えて、この1年に実際に取った案件と、断った・外注した依頼を書き出します。これは自己評価だけでは見えにくい、実際の需要とのズレを確認するための材料です。

WEBMARKSでは、実務スキル領域を横断して学べる学習コンテンツを社内カリキュラムとして用意しています。本数は300本以上です(出典: WEBMARKS社内カリキュラム情報、LTコンテンツ本数集計)。棚卸しの結果、特定の領域に学習コンテンツが必要だと分かったときの参考にしてください。

断った依頼が多い領域があれば、それは需要があるのに対応できていないというサインです。逆に、案件になっていない領域は、今は優先度を下げてよい可能性があります。

自社の案件獲得データでは、2案件以上を獲得した人の割合が70%を超えています。対象は2020年から2025年の案件獲得データです(出典: WEBMARKS案件獲得データ集計)。複数案件を並行して持つこと自体は珍しくないため、棚卸しでも1つの案件だけでなく、この1年の案件全体を俯瞰して記録することをおすすめします。

06手順4|評価されやすいスキルの観点でギャップを見つける

段階の記録と案件の記録を並べたら、評価されやすいスキルの3条件に照らして、ギャップを探します。評価されやすいスキルの条件は『評価されるスキルとされにくいスキル、Webマーケターの分かれ目』で整理しています。

具体的には、実務でこなせる段階にある領域のうち、成果への貢献をうまく説明できていない領域が無いかを確認します。段階としては高くても、説明力が伴わなければ、単価には反映されにくいためです。

このギャップは、追加の学習より先に、説明の練習で埋められる場合もあります。棚卸しの結果を、必ずしも新しいスキルの学習に直結させる必要はありません。

見つけたギャップを放置せず、次の手順で学習計画に落とし込むところまでを、1回の棚卸しの範囲としてください。ギャップの発見だけで終わると、翌年も同じ課題を繰り返し見つけるだけになりやすくなります。

07手順5|次の1年で伸ばす1〜2領域を決め、学習計画に落とす

棚卸しの結果から、翌年の学習計画へ接続するフロー 段階と案件の記録、ギャップの発見、伸ばす領域を1〜2個に絞る、四半期単位の行動計画にする、という4段階を左から右へ並べたフロー図。棚卸しは記録して終わりではなく、具体的な行動計画に接続するところまでが1セットであることを示す。 棚卸しから学習計画への接続フロー 記録して終わらせず、行動計画まで1セットで進める 段階と案件 の記録 6領域の到達段階と 1年分の案件を記録 ギャップの 発見 評価される/されにくい の観点で照らす 1〜2領域に 絞り込む 全部を一度に 伸ばそうとしない 四半期単位の 行動計画 確認できる行動として 書き出す ギャップの発見だけで止めず、右端の行動計画まで進めることが1回分の棚卸しです。
棚卸しの結果から、翌年の学習計画へ接続するフロー

ギャップが複数見つかっても、一度に全部を伸ばそうとしないでください。次の1年で優先して伸ばす領域を1〜2個に絞り込みます。

複数スキルを組み合わせる判断そのものの手順は『複数スキルを組み合わせる、Webマーケターの単価アップ思考』で扱っています。専門特化を続けるか、扱う領域を広げるかという戦略の選び方も、あわせて検討してください。

学習計画に落とすときは、抽象的な目標ではなく、具体的な行動として書き出してください。「SEOを伸ばす」ではなく「今年中に、優先順位づけを自分で判断した改善提案を3件行う」のように、確認できる形にすると翌年の棚卸しで振り返りやすくなります。

行動として書き出した計画は、月単位や四半期単位の小さな区切りに分けておくと、進捗を確認しやすくなります。1年後にまとめて振り返るだけでなく、途中で軌道修正できる仕組みを作っておくことが大切です。

08手順6|記録を保存し、翌年と比較できる形にする

最後に、今回の棚卸しの記録を、翌年も見返せる形で保存します。ファイル名に年を入れる、専用のノートを1冊用意するなど、方法は何でも構いません。

翌年の棚卸しでは、前回の記録と今回の記録を並べて比較します。段階が上がった領域、変わらなかった領域、案件の傾向がどう変化したかを確認すると、1年ごとの成長が具体的に見えてきます。

比較を重ねるうちに、自分の成長のペースや、伸びやすい領域と時間がかかる領域の傾向も見えてきます。この傾向は、次の学習計画を立てるときの重要な参考情報になります。

保存した記録は、転職活動や独立後のクライアントへの実績説明にも転用できます。棚卸しは自分のための作業ですが、副産物として、実務経験を言語化した資料が手元に残ることになります。

09つまずきポイント(失敗例つき)

年次棚卸しでよく起きるつまずきを整理します。

1つ目は、棚卸しの結果を、資格取得の計画にすり替えてしまう型です。資格の有無より、実際に何ができるかという実務レベルの記録が本来の目的であることを忘れないでください。

2つ目は、記録を残さず、感覚だけで判断してしまう型です。記録が無いと、翌年に比較する基準が無く、成長を実感しにくくなります。半年後には、今回どう判断したかの根拠自体を忘れてしまうことも珍しくありません。

3つ目は、棚卸しの結果を見て、一度にすべての領域を変えようとしてしまう型です。優先順位をつけず手を広げると、どの領域も中途半端なまま次の棚卸しを迎えることになります。

4つ目は、棚卸しを1回やって満足し、翌年以降続けなくなる型です。1回だけの記録では比較ができず、傾向をつかむという本来の価値が失われます。

5つ目は、うまくいかなかった案件や、断った依頼を記録から省いてしまう型です。都合の良い実績だけを残すと、棚卸しの精度が下がり、次の学習計画がずれた方向に進みやすくなります。

10完了の確認方法(できたかどうかの判断基準)

以下の項目で、この記事の手順を実践できたかどうかを確認してください。

  • 棚卸しを行うタイミングを、翌年も覚えていられる形で固定した
  • 6つの実務領域を、それぞれ3段階で記録した
  • この1年で取った案件と、断った依頼を書き出した
  • 評価されやすいスキルの観点でギャップを確認した
  • 次の1年で伸ばす領域を1〜2個に絞り込んだ
  • 記録を、翌年も見返せる形で保存した

すべての項目を1日で終える必要はありません。数日に分けて進めても、記録として残っていれば十分です。

11FAQ

棚卸しは年1回では少なすぎませんか

案件の状況によっては、半年に1回のペースで行っても問題ありません。ただし頻度を上げすぎると、変化を見るための比較材料が薄くなるため、まずは年1回から始めることをおすすめします。

忙しくて棚卸しの時間が取れません

30分から1時間程度でも、6領域の段階を記録するだけなら着手できます。完璧な記録を目指すより、まず着手して、翌年以降に精度を上げていく進め方をおすすめします。

実務経験がまだ少なくても棚卸しはできますか

できます。実務経験が少ない段階では、学習した内容や、練習として取り組んだ案件を記録の対象にしてください。経験の多寡にかかわらず、記録を残す習慣自体に価値があります。

棚卸しの結果、どの領域も実務でこなせる段階に届いていませんでした

珍しいことではありません。まずは6領域のうち、案件や求人で最も需要がある領域を1つ選び、そこに集中することをおすすめします。

棚卸しの記録は誰かに見せるものですか

自分自身のための記録であり、公開する必要はありません。ただし、転職活動や商談の準備として、記録の一部を職務経歴書や自己紹介に転用することはできます。

棚卸しをしても、次に何を学べばいいか決められません

案件で断った依頼の記録を優先的に確認してください。実際の需要があった領域から選ぶほうが、想像だけで決めるより確度の高い判断ができます。

年の途中で棚卸しの内容を見直してもいいですか

問題ありません。年1回は基本の頻度であり、大きな案件の変化があった場合などに、途中で簡易的な見直しを挟むことは有効です。

棚卸しを続けても、成長を感じられないときはどうすればいいですか

記録を並べて比較し、どの段階で足踏みしているかを具体的に確認してください。段階が変わらない場合は、学習量ではなく、実務での説明力や判断力の練習が不足している可能性があります。

棚卸しの記録はどんな形式で残すのがおすすめですか

形式そのものに決まりはありません。表計算ソフトで6領域を一覧にする方法や、文章でまとめる方法など、翌年の自分が読み返しやすい形式を選んでください。続けやすさを優先することが大切です。

独立して間もない場合も、年1回の棚卸しは有効ですか

有効です。独立直後は変化が大きい時期のため、案件の記録と段階の記録を残しておくと、経営の判断材料としても役立ちます。半年ごとに簡易的な見直しを挟む人もいます。