01結論(判断の軸)
求人票の「フルリモート」という表記は、制度として掲げられている内容と、実際の運用が一致しないことがあります。表記だけで判断せず、留保語の有無・就業場所の変更範囲の明示・出社を求める場面の記載という3つの視点から確認してください。
この記事は、フルリモートの求人がどれだけあるかという市場全体の割合を示すものではありません。求人票の表記から、実態に近い運用を推測するための視点を整理します。
02フルリモート表記のパターン整理(表)
求人票で見られる「フルリモート」に関連する表記は、大きく4つのパターンに分けられます。
| 表記パターン | 特徴 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 完全フルリモート | 出社の記載が一切ない | 入社時の研修や機材受け渡しの方法 |
| 条件付きフルリモート | 「月1回」「入社後3か月」等の条件あり | 条件の頻度と、条件が変わる可能性 |
| リモート可(基本出社) | 「リモート相談可」等の表現 | 実際にリモートで働く社員の割合 |
| 方針転換型 | 過去にフルリモートを掲げていた形跡 | 現在の運用が制度と一致しているか |
求人票全体から実態を読み取る手順は『Webマーケター求人票の募集要項、行間から実態を読み取る』で扱っています。この記事では、その中でも働く場所に関する表記に絞って掘り下げます。
転職先を事業会社・代理店・支援会社のどの型で検討するかによって、フルリモートの導入率にも傾向差がある可能性があります。3類型の違いは『Webマーケターの転職先、事業会社・代理店・支援会社で選ぶ』で整理していますが、型ごとのフルリモート求人数までは区分されていません。
03判断基準1|「原則」「基本」という留保語を見逃さない
「フルリモート」という言葉の直前や直後に、「原則」「基本」といった留保語が付いている場合、例外的に出社を求められる場面がある可能性を示しています。留保語が無い完全な言い切りの表記と比べて、実態に幅がある表記だといえます。
表記の実演(架空の例)
以下は、求人票でよく見る表記の実演です。実在の求人票からの引用ではなく、典型的な表記パターンを示す架空の例です。
「原則フルリモート(月1回の全社会議は出社)」
「原則」という留保語と、具体的な出社頻度が併記されているパターンです。出社が発生する場面が明示されているため、比較的実態をイメージしやすい表記だといえます。留保語だけがあって出社頻度の記載が無い場合は、面接で具体的な頻度を確認してください。
「フルリモート可(応相談)」
「応相談」という表現が付いている場合、フルリモートが標準ではなく、個別交渉によって決まる可能性を示しています。面接で、実際にフルリモートで働いている社員がいるかを確認しておくと安心です。
04判断基準2|就業場所の変更範囲を確認する
内定後に交付される労働条件通知書では、就業場所の変更の範囲を明示することが、2024年4月の職業安定法施行規則の改正で必要になりました(出典:厚生労働省)。
求人票では「フルリモート」と書かれていても、労働条件通知書の就業場所の変更範囲に、将来的な転勤や出社への切り替えが含まれている場合があります。求人票の表記だけで判断せず、内定後の書面まで確認することをおすすめします。
05判断基準3|出社を求める具体的な場面の記載を探す
フルリモートを掲げる求人でも、入社時の研修期間、四半期に一度のキックオフ、機材の受け渡しなど、特定の場面では出社を求められることがあります。これらの場面が求人票に明記されているかどうかを確認してください。
具体的な場面の記載が無い求人は、面接で「出社が発生する場面はありますか」と直接尋ねる価値があります。曖昧な回答しか得られない場合、入社後に想定外の出社を求められる可能性を考慮しておいたほうが安全です。
出社を求める場面が季節や事業フェーズによって変わる会社もあります。繁忙期だけ出社を求められるケースや、新規プロジェクトの立ち上げ時に一時的な出社を求められるケースもあるため、通年での運用実態を確認しておくと、想定外の負担を避けやすくなります。
06判断基準4|募集背景から運用の定着度を推測する
フルリモートの体制が、コロナ禍をきっかけに導入されたものか、創業時から前提になっている制度かによって、定着度は変わる場合があります。募集背景に「新設ポジション」と書かれている場合、その会社にとってフルリモートでの採用実績が浅い可能性もあります。
一方、既存メンバーの多くがフルリモートで在籍している会社では、制度が組織運営に組み込まれている度合いが高いと推測できます。面接で、チーム内のフルリモート勤務者の人数や在籍年数を尋ねてみると、判断材料が増えます。
マネジメント層がフルリモートで働いているかどうかも、1つの判断材料になります。管理職が全員出社している一方でメンバーだけがフルリモートという体制では、評価や情報共有の面で、出社しているメンバーが有利になりやすい傾向があるとされています。
Webマーケターの副業・フリーランス案件では、フルリモートまたはリモート可に該当する案件の獲得者の割合は81.5%でした。対象は時給情報のある案件・実務報告38件のうち31件で、2020年から2025年の卒業生データによる集計です(出典:WEBMARKS社内実績集計)。この数字は案件獲得者を対象にした集計であり、正社員としての転職求人の在宅対応割合を示すものではない点に注意してください。
事業会社とエージェンシー(代理店)で働く環境の基本的な違いは『インハウスとエージェンシー、Webマーケターが働く環境の違い』でも扱っています。働く場所の柔軟性は、この環境の違いとあわせて確認すると理解が深まります。
07ケース別のおすすめ
完全フルリモートの表記で、出社に関する記載が一切ない求人は、入社時の研修や機材受け渡しの方法を面接で確認してください。記載が無いこと自体が悪いわけではありませんが、確認しておくと入社後の認識違いを防げます。
条件付きフルリモートの求人は、条件の頻度だけでなく、その条件が将来的に変わる可能性があるかどうかも確認してください。事業拡大にともなって出社頻度が増える会社もあります。
過去の方針転換の形跡がある求人は、現在の運用が制度と一致しているかを重点的に確認してください。SNSや社員インタビューで、直近の勤務実態に関する発信が無いか調べておくと参考になります。
リモート可(基本出社)と表記された求人でフルリモートを希望する場合は、応募の段階で希望条件として伝えるかどうかを検討してください。選考の初期段階で伝えておくと、条件の擦り合わせに使える時間が増えます。
フルリモート求人チェックリスト(コピーして使えるチェックリスト)
- 「フルリモート」の前後に「原則」「基本」といった留保語が無いか確認した
- 出社が発生する具体的な場面(研修・全社会議等)の記載を確認した
- 労働条件通知書の就業場所の変更の範囲を確認する予定を立てた
- 募集背景が新設ポジションか、既存体制の一部かを確認した
- チーム内でフルリモート勤務している人数・在籍年数を面接で尋ねた
複数の内定を比較する段階まで進んだ場合、働く場所の柔軟性も比較軸の1つになります。比較の進め方は『複数内定が出たとき、Webマーケター転職の比較軸』で扱っています。
08FAQ
「リモート可」と「フルリモート」は同じ意味ですか
同じとは限りません。「リモート可」は出社が基本で、条件次第でリモートを認める表記として使われることが多い一方、「フルリモート」は出社を前提としない働き方を指すことが一般的です。表記の違いに注意してください。
面接で出社頻度をしつこく聞くと、印象が悪くなりませんか
働き方に関する確認は、入社後のミスマッチを防ぐための一般的な質問です。聞き方に配慮しつつ、率直に確認することをおすすめします。
フルリモートの求人は、代理店より事業会社に多いですか
WEBMARKSの集計には、事業会社・代理店・支援会社の型ごとに区分したフルリモート求人の件数データはありません。型による傾向を断定はできないため、応募先ごとに個別に確認してください。
過去にフルリモートを掲げていた会社が、出社へ方針転換した場合、求人票はすぐに更新されますか
会社によって更新のタイミングは異なります。SNSや社員インタビューなど、求人票以外の情報源もあわせて確認し、最新の運用実態に近づくよう情報を集めることをおすすめします。
地方在住でも、フルリモートのWebマーケター求人に応募できますか
求人によって異なります。完全フルリモートを掲げる求人であれば居住地を問わない場合もありますが、入社時研修や全社会議で出社を求める求人では、居住地の条件が付いていることもあります。求人票と面接の両方で確認してください。
入社後にフルリモートの運用が変わることはありますか
あり得ます。事業フェーズの変化や組織体制の見直しにともなって、出社頻度の方針が変わる会社もあります。入社時の条件が将来にわたって固定されるとは限らないという前提で、定期的に運用の変化を確認する姿勢が役立ちます。